ワキタの本来の株主価値は977億円と推定されます。しかし、実際の時価総額は516億円しかなく、差額の462億円は当社経営陣が毀損した株主価値であると弊社は考えます
(注:賃貸不動産、有価証券はいずれも税引後。事業価値は各事業の営業利益及び減価償却費にEV/EBITDA倍率4倍を適用して推定。有利子負債等は有利子負債、設備関係未払金、リース債務及び解約不能なオペレーティング・リース取引の未経過リース料の合算値)
当社の株主価値が大きく毀損されているのは、税引後で583億円にも上る賃貸不動産が大きなディスカウント要因として評価されているからだと考えられます。
ワキタの株価のバリュエーションは、2010年以降、解散価値を下回って推移しています。また、足元でもPBRは0.53倍、保有不動産の含み益を考慮した修正PBRに至っては0.46倍と非常に低水準となっています。
2021年の株主総会では、弊社の複数の株主提案に対して、当社の取締役会は「①経営の基本方針と相反する」、「②中長期的な企業価値の向上に資さない」、「③株主の利益を毀損するおそれがある」等の理由で反対しました。
しかし、当社の株価推移からは、当社の①経営の基本方針が、②中長期的な企業価値の向上に資さず、③株主の利益を毀損してきたことを読み取ることができ、株主価値の向上のためには経営方針の抜本的な転換が必要なことは明らかです。
(出所:QUICK ASTRA MANAGER)
なお、同業他社の株価水準は解散価値を上回っている時期もあり、当社の株価低迷は、業界環境に起因するものではありません。
(出所:QUICK ASTRA MANAGER)
割安な株価のバリュエーションは、ROEが、株主の求める期待リターン、すなわち株主資本コストを下回っていることを示しています。弊社が考えるワキタの株主資本コストは8%程度です。しかし、ワキタのROEは株主資本コストを大きく下回って推移しており、ワキタのリターンは投資家の期待を大きく下回っています。
(出所:QUICK ASTRA MANAGER及び弊社推定。株主資本コストの算定根拠はこちら)
また、弊社が考えるワキタのWACCは6.4%程度です。会社全体のROICはWACCを下回る水準であり、とりわけ商事事業・不動産事業のROICは著しく低水準です。このような状況が長期に渡って継続している以上、不動産賃貸事業をREIT運営事業に転換する等の抜本的な改革が必要です。
(弊社によるREIT運営事業への転換による株主価値向上施策の説明資料はこちら)
(出所:QUICK ASTRA MANAGER及び弊社推定)
2021年の株主総会では、資本コストの開示を求める株主提案に対して、当社取締役会は「株主資本コストの数値の開示自体が重要なのではなく、株主資本コストの把握を通じた収益計画等の構築が重要である」等の理由で反対しています。しかし、長期に渡り資本効率性を低下させ、株価を低迷させてきた当社取締役会が、資本コストを正しく把握した収益計画を構築してきたとは言えないでしょう。
従って、当社取締役会には資本コストを開示した上で、自ら把握する資本コストが適切であるか否かにつき投資家と対話を重ねていただくことを強く期待します。
ワキタの自己資本比率は約70%と非常に高水準であり、同業他社と比べても自己資本比率の高さは明らかです。また、ROEが同業他社に大きく劣る水準で推移しているのは、この過大な自己資本も大きな要因と考えられます。このような現状を踏まえると、配当性向を100%に設定し、自己資本をこれ以上積み増すことが無いように資本政策を転換すべきであると、弊社は考えます。
(出所:QUICK ASTRA MANAGER)
2021年の株主総会では、配当性向を100%にするよう求める株主提案に対して、当社の取締役会は「①投資の必要性を考慮しない、極めて短期的な視野に立脚したものであり、②当社の財務基盤を不安定化させ、結果として、③株主の皆様の利益を毀損するおそれがある」として反対しました。
しかし、当社の取締役会は「①投資は当社の財務状況を鑑みれば有利子負債を調達して行うべきであり、②現在の財務基盤が過剰に強固な状態となっていて、③株価が解散価値にも達していない当社においては、株主の利益は既に毀損されている」という事実を無視して反対しています。
当社の取締役会は、誤った資本政策によって株主の利益を中長期的に毀損し続けていることを自覚していただくこと、そして当社の財務状況を踏まえた適切な資本政策を実現していただくことを強く期待します。
ワキタがこのような株主価値を無視した経営に陥った原因の一つとして、経営トップに対する過剰な報酬の支給が考えられます。当社の脇田貞二社長は、年間5,100万円以上の報酬(※)を受け取っていると推定されます。その金額は当社より資本効率性にも優れ、規模にも勝り、株価のバリュエーションも高い同業他社を大きく上回る水準です。
弊社の目的は社長の報酬を低く抑えることではありません。株主価値向上と連動する報酬体系を実現していただきたいと考えているのです。
(出所:弊社推定)
※有価証券報告書に記載の取締役報酬及び使用人分給与各々の平均値を合算している